バージニア、おこたえします。サンタクロースなんていないんだという、あなたのお友だちは、まちがっています。
きっと、その子の心には、いまはやりの、なんでもうたがってかかる、うたぐりやこんじょうというものが、しみこんでいるのでしょう。
うたぐりやは、目に見えるものしか信じません。
うたぐりやは、心のせまい人たちです。心がせまいために、よくわからないことが、たくさんあるのです。それなのに、じぶんのわからないことは、みんなうそだときめているのです。
けれども、人間が頭で考えられることなんて、おとなのばあいでも、子どものばあいでも、もともとたいそうかぎられているものなんですよ。
〜中略〜
そうです、バージニア。サンタクロースがいるというのは、けっしてうそではありません。この世の中に、愛や、人へのおもいやりや、まごころがあるのとおなじように、サンタクロースもたしかにいるのです。
あなたにも、わかっているでしょう。世界にみちあふれている愛やまごころこそ、あなたのまいにちの生活を、美しく、楽しくしているものなのだということを。
もしもサンタクロースがいなかったら、この世の中は、どんなにくらく、さびしいことでしょう!
あなたのようなかわいらしい子どものいない世界が、かんがえられないのとおなじように、サンタクロースのいない世界なんて、そうぞうもできません。
サンタクロースがいなければ、人生のくるしみをやわらげてくれる、子どもらしい信頼も、詩も、ロマンスも、なくなってしまうでしょうし、わたしたち人間のあじわうよろこびは、ただ目にみえるもの、手でさわるもの、かんじるものだけになってしまうでしょう。
また、子どもじだいに世界にみちあふれている光も、きえてしまうことでしょう。
サンタクロースがいない、ですって!
サンタクロースが信じられないというのは、妖精が信じられないのとおなじです。
〜中略〜
サンタクロースをみた人は、いません。けれども、それは、サンタクロースがいないというしょうめいにはならないのです。
この世界でいちばんたしかなこと、それは、子どもの目にも、おとなの目にも、みえないものなのですから。
〜中略〜
この世の中にあるみえないもの、みることができないものが、なにからなにまで、人があたまのなかでつくりだし、そうぞうしたものだなどということは、けっしてないのです。
あかちゃんのがらがらをぶんかいして、どうして音がでるのか、なかのしくみをしらべてみることはできます。
けれども、目にみえない世界をおおいかくしているカーテンは、どんな力のつよい人にも、いいえ、世界じゅうの力もちがよってたかっても、ひきさくことはできません。
ただ、信頼と想像力と詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンをいっときひきのけて、そのむこうの、たとえようもなくうつくしく、かがやかしいものを、みせてくれるのです。
そのようにうつくしく、かがやかしいもの、それは、人間のつくったでたらめでしょうか?
いいえ、バージニア、それほどたしかな、それほどかわらないものは、この世には、ほかにないのですよ。
サンタクロースがいない、ですって?
とんでもない! うれしいことに、サンタクロースはちゃんといます。それどころか、いつまでもしなないでしょう。
一千年のちまでも、百万年のちまでも、サンタクロースは、子どもたちの心を、いまとかわらず、よろこばせてくれるでしょう。