The Legend of
 
Santa Claus part1

〜 サンタさんの内緒話・その1 〜

  Santa Claus is coming to town


 ふむ・・・。ようやくわしの出番のようじゃな。
 ルドルフに先を越されたのは残念じゃが、そんなことを気にしているようでは世界中の良い子に笑われてしまいそうじゃから、まあ良いとしようかのぅ。そこの一番いいソファにでも座って、ゆったりとくつろぎながら、わしの話を聞いてもらえると嬉しいのぅ。
 そうそう。ノドが乾いたりお腹が空いた時のために、ミルクとクッキーは必需品じゃよ。準備は良いかな?
 よしよし。それじゃあ、何から話そうかのぅ・・・。わしの住んでいるコルバトゥントゥリのことからでも話してみることにするか。元々わしは北極のノースポールの近くに住んでおったんじゃ。それが・・・。


 今から80年くらい前のことです。 
 子供たちが毎年必ずといっていいほど繰り返す質問がありました。

 「ねぇ。サンタさんはどこに住んでいるの?

 子供にとっては純粋に好奇心からの質問ですが、答えを考え出さなければならない大人たちにとっては、それどころではありません。本当にそれは頭が痛くなる問題だったのです。

 この頃、すでにサンタクロースは「陽気なおじいさんであり、毛皮のコートを着ている」というイメージは定着していました。このイメージからサンタクロースは「北極に住んでいて、そこにはクリスマス・プレゼントを作る秘密の工場がある」というお話が生まれました。(この北極説は、今でも一部の人たちの熱狂的な支持を受けています。)

 この北極説により、大人たちの悩みの種は解消するか・・・と思われた時、素朴な質問が寄せられました。ある子がこんな質問をしたのです。

 「北極って草も生えないんでしょ?じゃあ一体トナカイさんたちは何を食べているの?

 この問いには大人たちも頭を抱えてしまいました。

 「心配しなくても大丈夫だよ。トナカイたちは別の場所にいるんだ。そこには食べ物もたくさんあるんだからね。

 「ふ〜ん、そうなんだ。じゃあ、そのトナカイさんたちのいる場所はどこなの?

 ・・・こういうのを俗に「墓穴を掘る」といいますね。(笑)


 崖っぷちに追い詰められた(?)大人たちを、アメリカの新聞記事が見事に救いました。1925年のことです。

 「草の無い北極に、草を食べるトナカイが住んでいる訳が無い。子供たちの言う通りだ!だって北極じゃなく、サンタクロースはラップランドに住んでいるんだから!

 このトピックスにはアメリカ中の子供たちが沸き立ちました。もっともラップランド説が書かれた根拠というのは、よく分かっていなくて、そこにトナカイがたくさん住んでいるのに、新聞が目をつけたから・・・というのが真相かもしれません。
 その追求は置いておくとして、子供たちは地図帳を引っくり返して、

 「ラップランド?どこそれ??」と夢中になって探したそうです。

 このラップランド説を後押しする意見が、今度は1927年に出されました。フィンランド国営放送ウレイスラジオのパーソナリティをしていた、マーカスおじさんことマークス・ローシオ (Markus Rautio)が、番組の中で決定的な発言をしたのです。

 「サンタクロース(番組では”ファーザー・クリスマス”と言ってます)は、ラップランドの耳山に住んでるんだよ。どうしてかって?その耳で本当にいい子でいるか、悪い子でいるかを、ちゃんと聞いているのさ!

 これはマーカスの完全な創作でした。彼はアメリカの子供たちの騒動と、「耳山」という名前を結びつけて楽しいお話を作ろうとしただけだったのです。けれども、この「お話」はマーカスが考えていたレベルをはるかに超えて、大ヒットしました。戦争や金融不安で揺れていた時代でしたから、人々は夢を求めていたからなのかもしれません。

 さらに、「耳山」が、世界の耳目をあつめる「事件」が起こります。

 第2次大戦後、ロシアは、山全部をロシア領(元々は山頂がロシアとフィンランドの国境線)とする要求をフィンランドにつきつけたのです。
 ロシアは強硬で、フィンランドは譲歩せざるを得なくなりそうな気配でした。しかしフィンランド政府は、フィンランドの子供たちにとって、耳山がどれだけ大切な山であるかを説明しました。それを聞いたロシア側は態度を和らげ、やがてその要求自体も取り下げられたのです。

 これは考えようによれば、「ロシア政府は、『耳山』をサンタクロースの聖地だと公式に認めた」ということにもなります。こうして、「耳山」は世界的に「公認」されることになったのです。

 耳山というのはラップランドのサヴコスキにある高い丘です。地元ではKORVATUNTURI(コルバトゥントゥリ)と呼ばれています。
 その標高は一番高いところで483mで、3つの峰があり、フィンランドとロシアの国境になっています。岩肌がむきだした禿山で、その形に特徴があり、見る場所によっては、「野うさぎの耳」のようにも見えるので、「耳山」と呼ばれています。

 実はここはフィンランドのファーザー・クリスマスである「ユールプッキ (Joulupukki)」が住むと言われている場所です。またこの一帯はフィンランドで家畜としても使われているトナカイの育成区にも当たっており、雪に閉ざされているだけの北極よりも、サンタが住むにうってつけの場所かもしれません。
 しかも、ロシアとの国境に位置している関係上、一般の旅行者は立ち入り禁止となっていますので、『誰も近寄れない』という事実が、ますますこの場所を神秘的なものにしたのかもしれませんね。

 ちなみに頂上まで登って耳をすませると、サンタにあてた世界中の子供たちの声が風にのって聞こえてくるそうです。
 サンタは時々、黙ってうなずいたり、ほほ笑んだり、眉をしかめたりしながら、子供たちの声を聞いています。でもサンタ以外の人(たとえそれが奥さんであっても)には何も聞こえません。もし「どうしたら聞こえるようになれるの?」とサンタに尋ねたら、きっと黙って耳かきを渡してくれることでしょう。
 もっとも子供たちの声は聞こえなくても、ここから眺めることの出来る夕焼けの風景は、トント(上の画像の小人たちのことで、工場でクリスマスのプレゼントを作るお手伝いをしています)たちもお気に入りです。

 冬はとても過酷な自然環境なのですが、春や夏になると高山植物が咲き乱れますし、ブルーベリーやキノコの採れるエテラの森や、サーモンやマスは近くを流れるケミヨキ川で獲ることが出来ますので、北極で暮らしていた頃よりも食生活は豊かになったそうです。そんな耳山の麓にサンタクロースの家(というより館)があるのです。

 


 ご存知だとは思いますが、フィンランドの位置関係の復習をば・・・。

  上の地図で赤い矢印で示されたところが、コルバトゥントゥリです。

 フィンランドだけを拡大すると、こんな感じですね。行った事ないから、よく分かんないや・・・。 (^_^;)


 コルバトゥントゥリに引越した時に、北極にあった工場も一緒にフィンランドに移したそうです。(一説には「世界中に工場があるけど、目には見えない」とも言われています。)
 ご存知かもしれませんが、スカンジナビアは妖精伝説や神話の宝庫です。トントはもちろんのこと、大ヒットした「となりのトトロ」に出てくるトトロのモデルとなったトロールも、フィンランドの出身です。そう思えば、サンタさんが住むのにふさわしい土地なのかもしれません。

 1950年頃までにフィンランドのロヴァニエミ (Rovaniemi) の近くのナッパピイリ (Napapiiri) には、「サンタ・クロースの村」や「事務局」、「郵便局」までが誕生し、本物のサンタクロースと会って話が出来るようになりました。このため世界中からたくさんの人たちが、この地を訪れるようになったそうです。
 hideも一生に一度だけでいいですから、是非行ってみたい場所の一つです。冬ももちろんいいですけど、夏に行けば「白夜」が体験できますよね。じゃあ、2回行く・・・?(笑)

 
 大変お待たせしました〜☆ (^^ゞ っていう感じでしょうか。
 いよいよサンタさんの登場です。
 まずはサンタさんの身の回りについて、お話を進めて行きたいと思います。普通に考えれば聖ニコラス伝説なんかから始めるものでしょうけど、Xmas Count Downにお立ち寄りの皆様には、当たり前過ぎるかな?と思いまして、コルバトゥントゥリについて、まずご紹介させていただきました。
 全部で何話になるのか見当もつきませんけど、今年中には完結させますので、どうぞお楽しみになさっていてくださいね。

04/25/2004
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